ネイチャー&サイエンスカフェに行ってきました

12月のネイチャー&サイエンスカフェに行ってきました。

茨城県自然博物館の山崎晃司さんによる、ツキノワグマのお話。



クマについてはかねてから、里に出て大量に有害駆除ということで殺処分される現状を気にしていたところ。日本のクマ研究者としては第一線の山崎さんのお話が直接聞けるとあって、万障繰り合わせ出かけてきました。

で、研究者からみたクマたちの現状は・・・というと。

その生態については、まだまだわからないことが多く、実際の生息数についてもカウントすることは難しいのでかなり幅のある予測数でしか出せない。日本全国のツキノワクマのうち、九州のもの、四国、西日本のものと関東・東北のものは遺伝的にいくらか違いがあって、同一のものではないこと。また近年衛星による追跡調査で、ようやく季節や食物によって行動パターンが異なることがわかってきたこと。
そして山崎さんの想像では、戦後、狩猟圧が減少して森林が回復することによって一時的にクマの生息数はそれ以前よりいくらか増えたのだろうということでした。

わたしが考えても近年の森林や山間地の状況、気候変動などによってその数が同じ場所で生活出来なくなることは容易に予測できます。また、近年一部の地域では実際に分布域を少し広げているようにみえる場所もあるそうです。

つまり、クマの問題と言っても、全国一律同じではないこと。
またその生態はまだわからないことが多くて、生息数についても正確な数は不明であること。つまり人類はクマについて(たぶん地球上のあらゆる出来事についても)そんなに詳しくない、ということがよくわかりました。
そのようなクマを、人里に出てきて「危険」だからといって、とりあえず殺しておくというのでいいのだろうか。よくないとは思うけど、山崎さんがおっしゃるように、地元で生活している人たちにとってはそれはやはり脅威であるし、抜本的な対策も、それを実行する予算もない地域社会にとって、やはりある種苦渋の選択ではあるのでしょう。

お話を聞いてわたしが学んだこと。
日本のツキノワグマがおかれている状況は、かなり厳しい状態ではあるが、全国一律ではないこと。

クマ大量出没の問題は、日本の山野の荒廃・・・単一植林や放置林、山村の高齢化による耕作放棄・・・はたまた大気汚染や気象の変化、といった、まさに日本が直面している高度成長時代のツケいろいろが複雑にからまりあって生じていることで、抜本的な解決方法はないらしい・・・ただ、自治体によってその対応策は様々であって、棲み分けに積極的な対策をしている地域もあるらしい。

地域住民も、そこに住んでいない日本の人たちも、そのことに対してきちんと問題意識を持ち、予算を投じて森林整備や山村耕作に人材を投入し、クマに対して明確な境界線の教示と教育を行う。ということが出来たらなあ~と考えたことでした。
これはクマだけの問題ではなく、シカやイノシシ、その他の野生の生きものたちと共存するうえでなくてはならない方策だと思うのですが。と同時に、環境のバランスを積極的に取り戻すことは、地球の未来にとって必須の方策!と。

今の日本のやり方では、直接お金にならないところへは予算が降りてこないので、なかなか難しいでしょうね。
でも、根腐れしている植物に肥料をいくら与えても、回復するどころか枯死するばかりだと思うのに。土を耕し、人を育て、文化を育む世の中に、なったらいいな、とひとりひとりが考えたらきっと少しは変わると思うんだけど・・・

まず、知ること、学ぶことはやっぱり大切ですね。


12月の出来事ですが、年初につなげて考えてみました。
画像はその、茨城県自然博物館でのクマがテーマの企画展のときに製作させていただいた
ツキノワグマの子どもの試作です。
なんだか仕事場に住み着いた座敷童みたいな存在の一匹。

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