ももんがもどき

最近、当工房の日本の野生シリーズをかれこれ20年ほど作り続けてくれているEさんがお願いしていた生地と一緒にあるものを送ってくれました。それは通販で購入したという本州ももんがのそっくりさん。

もどきちゃんと本州ももんが

横から見ると似てますね、これはたぶんオリジナルをばらばらにほぐして
全く同じ型より作っています


ときどき、お知らせしてくださるかたがあって、もうずいぶん前からそのようなものがあることは知っていました。

ももんがばかりでなく、やまねやおこじょ、ふくろうなど・・・なにしろやまね工房を始めたのが1985年で、そのときからやまね、ももんがとも工房の看板役者で、今なお現役というぬいぐるみは今どき珍しいんじゃないでしょうか。それは、彼らが創作したキャラクターではなく実存する野生の生き物に似せたもので、それが本来持っているかわいらしさを表現出来たからだと自負しています。

もどきちゃんの後ろ足は省略、生地も色は同じだけど作業性の良さそうな薄いもの

はじめの頃はコピーを防ぐために意匠登録したほうがいいと助言くださる方もあり、気になったことも事実です。やまね工房では商標は登録していますが、それぞれのぬいぐるみたちの意匠は登録していません。なぜかというと、ひとつは意匠登録にはお金も手間もかかるので、大量生産して大量に販売するのでなければすべてに対してそれを行うのは事務部門のない零細な生産者にはかなり負担・・・というか事実上無理。

また仮に登録申請しても、野生動物の場合創作したキャラクターと違うので意匠が取りにくい。それ以上に、日本では大量に作って意匠そのものを消費してゆく経済構造なので、登録していてもその効果が出にくい・・・例えば有名なキャラクターでも、コピーして大量に販売し、ばれてから逮捕されたとしても利益を生む、と言う事実。またわれわれのような零細製造者は、それを訴訟に持ち込む体力もエネルギーも、時間もない・・・そんなことをしていたら製造販売が出来なくなってしまう・・・ということで結局コピーが出ても無視する~で現在に至ったわけです。

ぬいぐるみ作りを始めたばかりの頃、作ったものを買ってくれる、とA社の社長がみえたことがありました。実際少しは納品させていただいたこともあったのですが、社長の考え方には納得がゆかずそのうちお取引も途絶えました。彼の持論はデザイナーはいらない、工場(当時すでに中国の工場を使っていました)に良い商品を持ち込んでそれを改良し前の商品より良い物にして販売すればよい、というものでした。そしてその後その人はみごとに日本の野生シリーズをコピーして中国で大量に生産し、そのほかにもたくさんの商品を作って日本で一番大きなぬいぐるみ屋さんになったようです。

コピーを作られるということはにせものを作るわけで、それはもとのものが本物として認められたっていうことでなんだよ、と言ってほめてくださるかたもありましたけれど。まあうれしいようなうれしくないような・・・というか、実際にそれを手にとるお客さんにはわからないわけで、中国の量産品で、価格も半分以下、営業のスタッフもいるから全国のいろんなところに本物よりずっとたくさん置いてある・・・と言う状況はけしてありがたいものではありませんでした。でも、おかげさまでやまね工房は今でもやまね、ももんがを作り、かれらは今でもお客さんにかわいがってもらい、そしてとはきどき修理に帰ってきたり、どこかで迷子になってべつの人にかわいがられたり、しています。これはとてもうれしいことです。

毛足の長さとか頭の骨がありそうに見えるところがやまね工房のももんが
(動物の目は大事なものなので、生きているうちは頭の骨の中に入っています)

去年のことです。A社の社長がアパレル某有名ブランドのコピー商品を作って逮捕され、会社が倒産したと聞きました。残念ながら、有名ブランドでないわたしたちにはなにもできませんけれど、ものを作っていてこちらのほうがずっと幸せ、と胸を張って言えることは確かです。

う〜ん......絶句

このももんがもどきを見てA社の社長を思い出しました。倒産したとはいえ、日本でいちばん大きなぬいぐるみ会社だったのですから、何かのかたちで続いているのでしょう。そんな気がするももんがもどきです。

コメント

  1. こんにちは。
    一生懸命考え、創り、販売する。
    当たり前のことだけど、創るが造るになってしまう。
    結果、儲けだけを追いかけてしまう。

    これは消費者。購入する側にも問題があり、販売する側だけの責任ではないですよ。

    私も長野県の高原にあるホテルに勤めていた際、御社の商品をSHOPで扱わせて戴いておりました。

    手に取ってくださるお客様の反応も様々で、価格を気になさる方も多いものの、殆どのお客様は価格よりも、そのかわいさと創りの良さで選んで購入されてらっしゃいました。

    どうしても子供のおこづかいでは高価なものになってしまいますが、おとなが良い目を持っていれば、子供のこづかいに少し足してあげて、こちらを買うように薦める光景もありました。

    大変なのは承知の上で、頑張ってくださいと、申し上げます。

    今年の夏、お会いできる日を楽しみにしています。

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  2. りゅんさん、

    お客さんの声を聞いたりぬいぐるみの消息を知るのもうれしいのですが、やはりその仲立ちをしてくれるかたにも作り手のきもちが伝わるのはうれしいです。

    手仕事のものは手がかかる分だけ、時間がかかる分だけ、そのものに関わっているわけで、だから大げさに言えば「ものはこころ」だと思うんですね。

    それはけして押しつけるものではないけれど、たくさんのコメントを付けなくても出来上がったものはちゃんと「出来かた」を自分で言ったりすると思うんです。

    そして、使い手と出会う。その場所を作ってくれるのが、置いていただいているお店ですから、やまね工房のぬいぐるみたちは問屋さんを通さずできるだけ「日本の野生」たちがいるところに置いていただいています。それは、やまね工房を始めた20年以上前からずっと同じです。もっとも、日本の小さな製作集団の手から、たくさんの種類を作るとなるとそれぞれの数はそんなにたくさん出来ないんですけどね。

    でも、作り手にとってはみなさんによろこんでいただけるというのがやっぱり一番幸せです。それがある限り、なかなかやめられないですね。

    ありがとうございます、がんばります。

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