ぬいぐるみを作り続けてかれこれ二十数年が経ちました。
仕事を始めるとき、ちょっとしたご縁で当時デザイン関係のお仕事をされていた方に相談にのっていただいたことがありました。わたしの世代は企業で働くにしても、自分で起業するにしても、女性であることに特に不自由は感じませんでしたが、少し前の先輩たちはそれ以前の日本の社会の中で様々な苦労をされた世代です。そして、そういう人たちがその後に続くわたしたちに、物理的にも精神的にも惜しみないサポートをしてくださったおかげで、例えばわたしも今があるというふうに感じます。
そんなサポートや、こんなことしたい!というわたしの願望を人から人へつないでくださったり、ぬいぐるみたちを紹介してくださったり・・・という友人や仲間たち。そして実際にぬいぐるみたちをご購入くださって大事にしてくださるお客さんたち。そんなみんなのおかげで今のやまね工房はあるのです。近ごろの経済状況や日本でのもの作りを考えるとき、やまね工房が今もある、というのは冗談ではなく奇蹟に近いとわたしは思います。
ほとんどの日常は毎日手を動かして何かを作ったり、植物や生きものの世話をしたり、たまにはどこかへ遊びに行ったり、という同じことの繰り返しです。作ったぬいぐるみたちは、わたしのところから出てゆけば、それぞれいろいろな運命を歩くのでしょうが、それをわたしが知ることはそんなに多くはありません。そして、前述のように、ものを作る仕事は日々どんどんやりにくくなって、時には続けるのがつらくなることもあります。
今から2~3年前のある日、そんな気分でいたころのことです。いつもは見ない「24時間テレビ」をぼんやり見ながら、何かしていたとき、画面の後ろに何だか見たことのあるものが映っています。それは笑顔の女の子に抱かれる「きつねの赤ちゃん」でした。その女の子は14才を前にして病気で亡くなった岡田美穂さんです。彼女は闘病中にたくさんの絵手紙を描き、それにお母さんが文章を添え「みぽりんのえくぼ」と題して出版されたのでした。美穂ちゃんときつねの赤ちゃんの出会いは家族で出かけた北海道旅行とのこと。そして、あとから網走のスタッフに聞いたところ、その旅行で網走の店を目指してくださり、その後きつねは手術室まで闘病に寄り添い、一緒に天国に旅だったとのこと。その翌年、お母さんが再度店を訪ねてくださって御本をいただいたこともわかりました。
当時一人で店を切り盛りしていたスタッフは、話さなかったっけ?という感じで、記憶にはあったのですがこちらには届いていなかったのでした。ちょうどいろいろ行き詰まっていたころのことで、きつねの運命はわたしに衝撃を与えました。早速お母さんにお手紙を書いて出版社に託したところ、丁寧なお返事をいただきました。そして、そこから先、やまね工房が続いてゆくひとつの原動力になったのでした。
この夏、美穂ちゃんは今度は役者さんが演じるドラマになって「24時間テレビ」に登場しました。きつねは出てこなかったけれど、闘病というつらい期間の中ですばらしい絵の数々を残された美穂ちゃんと、ご家族のありように現代社会の闇とは反対の、希望を感じた人は少なくないでしょう。読み終わった本は、だれかにおすそ分けしたいと思ってあるひとに差し上げたのですが、ごく最近あげてよかったなと思う出来事がありました。こんなふうに、ひとつひとつの出来事はバラバラのように見えて、ひょっとしたらひとつながりなのかもしれない、と思えることがたまにあります。それはもしかしたら単なる思いこみかもしれないけれど、それを糧にして何かを続けることは悪いことじゃない!と感じるこの頃です。
それは、ときどき修理に帰ってくるぬいぐるみたちだったり、どこかの映像にちらっと映る彼らだったり、たまにいただくメールやお便りだったり・・・
【下の画像は、修理依頼で帰ってきたぬいぐるみたちの修理後の姿】

大事にしてもらってありがとう

大事にしてもらってありがとう
おかげさまでなんとか続いてきたやまね工房、今年は秋にまた東京・ミツムラアートプラザでの「いきものつながりアート展」と、巡回長崎展などいくつかの展示を予定しています。
存続の危機はとりあえず脱したものの、今年は応援してくださった大切な方たちが遠くへ旅だってしまったり、展示も巡回で遠くへ出張するなど25年めのひとつの節目なのかもしれません。最初に書いた先輩に言われた「20年続けなさい。そこまで続ければきっと何かがつかめるし、それだけやってだめならあきらめればよい。」というのが、ようやく少しわかったような気がします。20年も、ひとりでいくらがんばっても続くはずがありません。今ここに書いた、みなさんとのつながりを大切にすること、それが20年継続のひとつの意味かな、と思います。どんなに大きな企業でも、20年それを続けるということはそんなに簡単なことではないでしょうし、お金は全然ないけれど、きっとこれはやまね工房にとってすごい財産なのです。
さあ明日もがんばろうっと!展示、見に来てくださいね。