さとやま暮らし

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2008年1月12日土曜日

日本に住むヤマネコ

西表島のイリオモテヤマネコと、長崎県は対馬のツシマヤマネコ。
地図で説明すると上のマーカーが対馬で下が 西表島です。


よほどの猫好きでない限り、えっ日本に野生の猫なんているの?という感じでしょうけれど、イリオモテヤマネコが地元以外で学術的に発見されたのは比較的最近のことで、かなり話題になったので名前だけはご存じの方が多いでしょう。わたしは西表島にも一度行きましたが、野生のイリオモテヤマネコにはまだお目にかかったことはないです。

一方ツシマヤマネコは、対馬がずーっと昔朝鮮半島の一部だったということの生証人みたいなもので、ずっと以前から生息は知られていましたが、大陸に住むベンガルヤマネコの亜種ということで分類上は朝鮮半島やアジアに広く住むベンガルヤマネコと同じものというふうに考えられてきました。対馬には他にもツシマテン、とか固有のほ乳類、両生類などがいて、それらも本州にいるものとは異なり、朝鮮半島、ひいては大陸のものが島によって分離されたことの生証人です。


遙か昔に、言わば島に閉じこめられたかたちの彼らは、たぶん遺伝学的にも貴重な存在と思われるのですが、島故の事情によってあるものは生き残り、数も増え、またあるものは絶滅する、という歴史をもっています。

そんなツシマヤマネコ、近年は島でもいわゆる里山的な山間部の農地が減ったり、開発による生息環境の悪化、また交通事故や飼い猫からの伝染病によって数が激減してしまいました。イリオモテヤマネコが「発見」されてその希少性や保護が論じられている間に、ツシマヤマネコはいなくなってしまうのではないか?そんなことが気になっていたころ、当時の環境庁と長崎県は、地元対馬に保護センターを作り、彼らの調査や保護活動を行う計画を立てていました。そして、まだ保護センターが出来る前のこと、地元にそれをアピールするイベントがあって、わたしも対馬に行ってきたのです。

それから10年近くの日々が過ぎ、数年前のこと、今度は保護センターの依頼で、ツシマヤマネコのぬいぐるみを作ることになり、再び対馬へ行く機会がありました。ちょうど九州では桜が開花する3月のことでした。対馬の島内は、少なくなったとはいえかつての里山的風景が広がり、帰りそびれた鶴の姿や、本州では見られない渡り鳥のミヤマガラスなど、大陸の香りもただよう不思議な光景でした。早咲きのスミレや、たくさんのヤブツバキなど早春の花たちが保護区の公園に咲いていました。ここは渡り鳥の中継地としても重要らしく、それをねらってかハヤブサやオオタカなど猛禽の姿も目立ちました。そして、野外では「糞」しか見られなかったものの、事故などで保護されたツシマヤマネコたちの資料と、病気のために野生復帰が不可能になった「ゴエモン」君にも会うことができました。「ゴエモン」君はそのとき、ケージの中で終始うなり続け、まるっきり野生の、猫というより猛獣といった感じの生き物でした。きっと、木も草も土もなく、消毒液のにおいのする環境で恐怖にかられていたのでしょうね。その後、上野動物園で見せてもらった目の前の鉄柵に頭をすりすりするトラ・・・まるっきり飼い猫のような、との対比が鮮やかでした。

そして、対馬の野生生物保護センターで、たくさんの人たちにツシマヤマネコを知ってもらい、ヤマネコたちの未来を一緒に考えてもらうために、と作ったのが、「ツシマヤマネコの開き」・・・保護されて麻酔がかかった状態のヤマネコの体をリアルに製作したもの・・・大きさや重さ、体の特徴などを体感してもらうために。




他に剥製でないジオラマ製作のために、動きのあるリアルなヤマネコと、主食であるアカネズミ、カヤネズミのリアルなもの。でした。たった一泊でしたが、対馬に行って現地で保護にかかわるスタッフの方たちに会い、地元の方たちも様々な事情の中でヤマネコも自分たちも、気持ちよく住める未来を模索している様子が伝わってくる確かな時間でした。


そして、2007年秋のこと、そのツシマヤマネコが福岡の動物園などで順調に数を増やし、横浜のズーラシアと、井の頭自然文化園分散飼育、公開されるという報道がありました。このうち、井の頭の自然文化園からの依頼で、再びツシマヤマネコの開きと、リアルタイプの「デスクトップミュージアム」を製作することになったのです。考えてみれば不思議な縁ですね。そういえば「やまねこ」と「やまね」はちょっと似ていて、たまに間違えちゃう人もいるけど・・・いずれにしても、ツシマヤマネコや日本の自然環境の明るい未来について、一緒に考えてくれる人が一人でも増えますように、役に立ったらうれしいなぁと、そんなことを考えながら作りました。ちなみに、主食は今年の干支なので、そちらのほうも6種類ほど、一緒に納めさせていただきました。機会がありましたら是非、ほんもののツシマヤマネコとともに、そんな「もどき」たちにも会ってやってください。

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